K-HACCP認証 現場レポート③(株式会社龍名館様)料理長の意識が劇的に変化!在庫管理など生産性にも波及効果を与えるHACCP運用とは

2019年7月3日

料理長の意識が劇的に変化!在庫管理など生産性にも波及効果


――K-HACCPの構築で得られた効果について。

和田 最も実感しているのは、料理長の意識が劇的に変わったことです。以前から「ルールをきちんと守る(守らせる)」「衛生指導に対して迅速な改善を実行する」などの姿勢は見られていましたが、最近では、例えば「なぜ、今のやり方では、微生物検査やATPふき取り検査が高い値になるのか?」「どこに汚染源や汚染経路が潜在しているのか?」「どのタイミングで汚染したのか?」といったことを自発的に考えるようになっています。「こういう場合はどうしたらよいか?」といった質問を受けることも増えています。
 料理長の意識が変われば、自ずと若手の意識も変わります。現場全体で「自分たちも料理長の考え方を理解して、自主的な5S活動や衛生管理活動に努めよう」という好循環が生まれています。


――現場の衛生管理に対する意識や感度を重視しているのですね。

和田 「決められたルールは必ず守る」という意識の浸透を図ることは、衛生管理やHACCPの運用においてきわめて重要な要素です。
 その際、問題点が目に見えていれば、例えば、「ここが汚れているので、しっかり洗浄しましょう」「異物が混入する可能性があるので、この資材は使わないか、別の資材に変更しましょう」といった指摘であれば、現場はすぐに改善したり、正しい行動をとるようになります。
 しかし、微生物のように、(問題点が)目に見えなければ、現場は「なぜ、この作業が必要なのだろう?」と疑問に思うかもしれません。疑問を抱えたままでは、その作業は定着しません。あるいは、「ここに微生物が残存している可能性があるから、ここの洗浄は重要だ」と頭では理解していても、効果が目に見えなければ(実感しにくければ)、作業として定着しにくい場合もあります。当社の場合も、例えば「除菌のためにアルコールを噴霧する」「ダスターをこまめに除菌する」といったルールは、定着までに時間がかかりました。「普段はできているが、忙しくなると忘れてしまう」といった状況にならないよう、今も微生物検査やATPふき取り検査の数値を示しながら、説明を継続しています。


――「決められたルールは守る」という点では、「HACCPに取り組むと、文書や記録の負担が増える」といわれます。

和田 確かに記録は増えましたね。健康チェック、温度チェック、電解水の濃度チェック、食材の仕込み日や提供期限のチェック、廃棄物のチェックなど、HACCPで必要な記録は多岐にわたります。以前は「作業はしているが、記録がない」という状況も散見されました。「HACCPでは記録を残すことが大事」という意識を浸透させるのには苦労しています。
 一方で、当社の場合、食材の日付管理を以前よりも注意深く行うことにしたところ、(食材の)先入れ先出しが徹底され、食材の在庫が適切に管理されるようになりました。以前であれば「誰がいつ仕込んだかわからない食材」が散見され、「確認できるまで次の作業が始められない」といった状況に陥ることもありました。現在は、そうした無駄は排除できています。HACCPに取り組むことで、品質管理や生産性の向上、内部コミュニケーションの充実といった副次的効果も得られたと感じています。
 できるだけ文書や記録の負担は軽減した方がよいので、今後は「記録づけが必須な箇所」と「記録づけを省ける箇所(記録が不要な箇所、自動記録できる箇所など)」を見極めたり、記録づけのデジタル化なども検討していきたいと思います。



ハザード分析を行うことで、ハザードやリスクに対する理解が深まる

――最後に、今後の課題についてうかがいます。

和田 まずはマニュアルの整備をさらに進めることです。例えば、当社は“都内のレストラン”という特性上、施設のハード面での問題もあります。厨房のスペースが限られているので、「厨房の内部と外部がつながっている」「厨房内でのスタッフの動線の構築が難しい」などの課題もあるので、ソフト運用のさらなる充実・強化を図っていかなければなりません。
 また、今までの一般衛生管理を主体としたHACCPから、フローダイアグラム、ハザード分析の精度をさらに向上させた形のHACCPに今後は移行していく予定です。レストランではさまざまな原料や副原料を扱い、かつ工程やメニューも多いので、そのすべてでフローダイアグラムの作成やハザード分析を行うのは困難です。「調理工程別にメニューをグループ分けし、そのグループ内の1メニューを分析し、その他メニューに応用していく」という作業を、協和医療器の指導のもと行っています。実際にフローダイアグラムの作成やハザード分析を行ってみると、「どこにハザードが存在し得るか?」「どのタイミングで、どのような対策を講じればよいか?」といった“ハザードの動き”や“潜在的なリスク”が「見える化」できることを実感しました。手間も時間もかかる作業ですが、非常に大きな価値がある作業だと思います。
 それと人材育成ですね。とりわけ「料理長と同じレベルの衛生意識を持った若手」を増やすための取り組みが不可欠です。全員が正しい知識を持ち、正しい衛生管理行動を行えるようにしていくことは、重要な課題の一つです。


――人材育成は食品業界に共通の課題です。

和田 衛生監査の結果やマニュアル、ルールなどを一方的に伝えるのではなく、「どのようなリスクが潜在するか?」「どのような問題が起こり得るか?」をしっかりと理解することが大切です。そのような知識を増やしておくことで、何か問題が起きた場合でも迅速かつ適切に行動できるようになるはずです。
 現場のコミュニケーションやモチベーションも重要な課題です。例えば「マニュアル通りに(あるいは指導された通りに)洗浄したのに、微生物検査の結果が良くなかった」といった状況が続いた場合、現場スタッフの士気が「これだけ頑張っているのに、どうして……」と下がってしまうかもしれません。そうならないように、平時から「どうしたら効果が上がるか?」「どの方法が最も現場に適しているか?」を現場と一緒に考えることが大切だと思います。
 HACCPでは全員が一丸となって取り組む姿勢が不可欠です。もし監査部門や検査部門だけで一方的にHACCP導入を進めていたら、現場との間に溝ができていたかもしれません。「現場と一緒に取り組む」という雰囲気を大切にしてHACCP構築を進められたこと、協和医療器から適時・適切なサポートやアドバイスをいただけることは、K-HACCPを活用した大きなメリットの一つです。
 今後も全員で高いモチベーションを維持してK-HACCPの継続的改善に努め、“龍名館”ブランドをしっかりと守っていきたいと思います。

――ありがとうございました。



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(月刊フードケミカル  立石 亘)

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